溶融樹脂の温度が下がるごとに分子運動がゆっくりと収まり、プラスチック温度が結晶化温度まで低下し固化したとき、分子が規則的に並んだ結晶部分を持つものが結晶性プラスチックです。
結晶性プラスチック
非晶性プラスチック
溶融樹脂の温度がある程度まで下がると分子運動が停止します。そのとき分子同士が結晶部分をもたず、不規則に絡み合ったまま固化するものが非晶性プラスチックです。
結晶性プラスチックと非晶性プラスチックの性質と特徴
性質と特徴 | 結晶性プラスチック | 非晶性プラスチック | ||
透明性 | 低 | 高 | ||
耐薬品性 | 強 | 弱 | ||
塗料・接着性 | 低 | 高 | ||
温度特性 | ガラス移転点(Tg)、融点(Tm)がある | ガラス転移点のみ | ||
寸法精度 | ×成形収縮率大 | 〇成形収縮率小 |
透明性について
非晶性プラスチックの多くは、透明性・透過性が良いですが、結晶性プラスチックは結晶部分と非晶部分での光の屈折率が異なるため透明性が低下します。
ただし、結晶性プラスチックの結晶化し始める温度(結晶化温度)付近で急速冷却することで、結晶化する時間を不足させて結晶化の比率を低下させることで結晶化プラスチックでも透明性を出すことができます。ペットボトルのPETは結晶性プラスチックにもかかわらず透明性を持つのは、この原理を利用しているからです。
耐薬品性について
樹脂の種類によりますが、結晶性プラスチックの多くは結晶部分に薬品が入りにくいため、耐薬性が強い傾向があります。
そのため薬品や洗剤などの容器にはPE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)などの結晶性プラスチックが多く使われています。
塗装・接着性
結晶性プラスチックの多くは薬品が入りにくいので、塗装性や接着性が低下します。樹脂の種類によっては前処理としてプライマー塗布やコロナ放電などを必要とする場合があります。この性質から塗料の容器や接着剤の容器に利用されています。
温度特性
プラスチックは温度変化に伴い性質が変化します。高温になると溶解し軟質化し、温度が低下すると硬質化(ガラス状態)になります。この2つの状態の境目の温度を「ガラス転移点(Tg)」といいます。また、高温になり軟質化から液状化になる温度を結晶部分を持たない非晶性プラスチックには融点(Tm)がなく、ガラス転移点(Tg)のみを持つ性質があります。これらの温度特性は、耐熱性や成形温度に関係し、プラスチック樹脂の種類や添加剤によっても変化します。
寸法精度
一般的に結晶性プラスチックの場合、結晶部分は溶融状態では体積が増え、固化すると収縮して体積が減少します。寸法精度はプラスチック樹脂を冷却・固化させた時の収縮の大きさになります。
成形収縮率
関係し、樹脂の収縮率が大きいほど寸法精度が低くなります。そのため金型の設計にはそれらを配慮した設計が必要となり、高度な技術と経験が必要となります。